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VOL.94 [2008.9.9]
私を田んぼアートに連れてって4
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我々がマーチから降りるや、西部劇のインディアンの襲撃のように甥っ子姪っ子が、「Yちゃん、Yちゃん」と大喜びで寄って来て、Yさんの周りをぐるぐると回り出した。いつも遊んであげているので大人気だ。
Y |
“はいはいはいはい。ちょっと下から田んぼ見てくるからね。おじいちゃんと待っててね。” |
我々は田んぼの畔近くまで行った。
Y |
“まず、平面から見ますね。黒と線の稲が植えられてるっていうだけしか解りませんよね。しかし、これが天守閣から見ると、すごいわけです。” |
ということで、我々は城内に入った。
城内といっても役場ではあるが、そこで賑やかな子供たちに囲まれて、父上にご挨拶をした。謹厳実直、しかし、いかにもYさんの父上という感じの優しさが笑顔から滲み出てくる。今日の道の状況とか家で待っている家族の事とか話す父と娘は見るからに仲良しだ。
「仲良き事は美しき哉」。こうして家族の仲が良いって、人生の一等賞だ。Yさんが気立て良いのは家族の愛情をいっぱいもらって育ったからだねと改めて思った。
さて、仕事仕事。
田舎館城は4階までエレベーターで上がれる。小さめのエレベーターだ。しかして、シーズンに集中して24万人が来るとしたら、このエレベーターでは厳しいだろうなと思っていると、
Y |
“この前両親と来た時は、混んで混んで、6階まで階段で上がりました。今日は夏休みも終わったし、もうすぐ閉まる時間だから空いてますね。” |
父 |
“めちゃくちゃ混むと4階の議会の委員会室開けて見てもらうんですよ。” |
4階に着くや子供たちは脱兎の如く階段を駆け上がりだした。我々探検隊の着く前にすでに1回登っているという事で、要領は得たものだ。
ちなみにこの原稿は桃を食べながら書いている。“ひゃーっ、汁が原稿に飛んだ”というぐらいつゆだくで、しかも上品な甘みがたまらない。福島や山梨のではない。父上から、“試しに植えてみていたものが今年出来た。思いがけずとっても良く出来て、暖かくなってる(温暖化)のは本当だと感じているんだ”とのお話とともに頂いたものだ。「まっしぐら(新種のお米)」の出来がすこぶる良く、業界でも話題だという事も併せて、やはりじわっと平均気温が上がっているのではないかと改めて感じている。
霜雹害の現場で聞いたことには、50年間一度もここで霜や雹害は出たことがないとか、雲の通り道は別で、生まれて初めてここを雹の雲が通ったとか、ということだそうだ。温暖化という表現から、ま、温度が上がるくらいか、という思いを抱きがちだけれども、実際は気候変動や気象の異常、海流の大きな乱れが大問題なのである。
それにしても、今年は全国的に奇怪な集中的な雨とか竜巻とか多い。世界こぞって低炭素社会を目指さなければならない。
(桃の甘くて濃い汁がやっと乾いたので、本編に戻って書く)
よそのお客さんも同様に「おーっ」と感嘆の声をあちこちで上げている。見事さにまずは感激の声が上がるのは当然だ。
すごい。素晴らしい。三沢の連中なら「ワンダフル」とか「ブラボー」と叫ぶところだろう。
ハワイに異動になったオショネシー司令にも見せてやりたかったが、F2とかF16でみんなで見に来られても困るな。
Y |
“どうです。これぞ、正にアート。村民の強い意志による継続力と、遠近法とコンピュータ技術の勝利ですね。サイン・コサインを馬鹿にしてはいけません。学校で教える事には、やはり意味があるのです。将来必ず役立つのです。と、私は受験生を叱咤激励しています。私は就職試験で浪人したりしましたから、その事がよく解ります。やっぱり子供の時や学生の時は何よりも勉強しなきゃだめなんです。私はそう主張します。つい、父の前だったりしたので気合いが入りましたね。さて、今年の題材はご覧の通り「恵比寿様と大黒様」です。” |
オ |
“いやぁ、実にどちらも福々しいね。テーマは景気回復と明るい未来ってエレベーターで父上に伺ったけど、恵比寿様の釣っている鯛の見事なこと、お顔のいいこと、素晴らしい。” |
Y |
“大黒様の足下の米俵の溢れんばかりの膨れ具合といい、大きな耳に膨れたほっぺた。持ってる打ち出の小槌の立派さ。色合いも先々週よりぐっとくっきりして来て、いいですね。今年もいいですね。” |
父 |
“この色はね、(つがる)ロマンに紫稲、黄稲、紅都の4色に加え、色素の薄い稲を使って白色を表現してるんだけど、なかなか難しいんだ。ここまで来るのに15年かかってるんだ。” |
15年!まさしく継続は力なり。
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三村 申吾
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