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VOL.40 [2008.1.24]
全ての’72年組に
 まだ新年会が続いている。
 小正月が済んでも旧正月はこれからだから、ま、まだ忘・新年会シーズンかと妙な納得をしている。
 さて、ほどよい酔っぱらいはいい。男でも女でも愛嬌がある。
 自ら酒の肴になったりして、場を盛り上げてくれる。
 夕べも、
 「わたし今年、年女なんですよ〜。’72年生まれだけど、24歳かもしれないんですよぉ〜」
 と飛躍した!?論理を展開したA子のおかげで、生まれの干支の話でわいわい賑やかになった。
 自分は名の表すごとく申(さる)年生まれだけれど、「’72年」という言葉に突き動かされるものがあった。
 「’72年10月9日」。
 やっぱり少し酔っぱらいになっていた自分は、いかにも“おじさん”の言いそうな
“キミたち若いものは知らんだろうが、東京オリンピックがあって聖火が青森を通ってだな、青空にゼット(ジェットでないところが当時っぽい)機が五つの輪を描いてだな”
というあの感じで、
 「A子は、’72年10月9日を知っているかな?」
 と参戦してしまった。
 即座に、なんと当意即妙にも
 「え〜、失恋したんですかぁ」
 と、酔っぱらいおじさんをあしらうのに、ズバリなひと矢が返されたのであった。
 「ジャコビニ彗星が来たんだ」
 と応じて、すっかり酔っぱらいおじさんになった。

 ♪ 夜のFMからニュースを流しながら
   部屋の灯り消して窓辺に椅子を運ぶ・・・

 その頃は、荒井由美なのかユーミンなのか松任谷由美だったのか定かではないけれど彼女に『ジャコビニ彗星の日』がある。
 もう誰も、当然’72年組じゃ知らないだろうけれど、切なくていい歌だ。今でも口ずさめる。
 当時高校一年生の自分も、世の中で話題のこの彗星を見たいと、物干し場に毛布を持ってあがった。
 見えなかった。百石の町の、そんな十分ではない家々の灯りだけを覚えている。

 「5月9日なら知ってますけど、10月はまだ赤ちゃんです。知ってませ――ん。」
 「なんで5ヶ月前を知ってんの!?」
 「だって、私、大きくなっちゃってその日に生まれたんですよぉ〜」
 酔っぱらいと話すのはやめて、おじさんに徹することに決意した。
 「アームストロング船長、知ってる人……」
 と、もっとわかりやすい話題に変えた。

 あれからだ。ジャコビニ彗星の日からだ。
 日食月食、オーロラ、ハレー彗星、獅子座流星群、ボイジャー、かぐや……。
 星空の話題には、ことさらにトキめく。
 地にあって生きなければならない、私たちではあるが、
 “見上げてごらん夜の星を”。
 塵ひとつなく澄みわたる北国の冬の星座は、なお美しく輝きを増し、宇宙はどこまでも広大無辺に広がっている。

 当然のごとくほろ酔いが集まって、カラオケに向かうことになり、その群団にさよならとおやすみを言って

 ♪ さびしくなればまた来るかしら
   光る尾をひく 流星群

 とひとりハミングしながら帰った。
 今ここに
 「全ての’72年組の、年女年男の幸を祈る!」
 だから、今夜も、宇宙を全速力で駆け続けるジャコビニ彗星の事を知ってやって欲しい。
三村 申吾

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