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VOL.06 [2005.1.27]
「先達はあらまほしき事なり」

 久々に百石の実家に帰ったら、天野郁夫先生から『学歴の社会史』(平凡社ライブラリー526)という本が贈られて来ていた。先生は東大の教育学部長をなさった方で、現在でもこの国の教育社会学の第一人者である。
 東大の学生時代に面識があったわけではなく、新潮社で編集者をしていた頃、『試験の社会史』というサントリーの学芸賞をとった本の卓越した面白さに魅かれて研究室をお訪ねし、以後お付きあいをさせていただいている。
 ともあれ、編集者時代の癖で、手にとってまずは目次を見たら、中々興味深い。そこで読み出して驚いた。もうすでにいつか読んだような記憶がある。
 ひょっとしてと思い、あとがきを捜して読んだところ「…編集者といえば新潮社版でお世話になった三村申吾さんは、その後町長から代議士へ、さらには青森県知事へと華麗なトラバーユを続けている。私の本も、それには及ばぬまでも、新しい旅立ちの時を迎える事ができた。…」とあった。
 いやー、自分が担当した本であったればこそ、それなりに内容を記憶していたわけである。
 天野先生にさっそく礼状を「増刷の折りには“華麗な”ではなく“ドタバタと”にお改めいただければ幸甚です」としたためた。
 自分の編集した本をPRするのも何だが、この『学歴の社会史』は、明治政府がつくった教育システムを社会がとまどいながらも受け入れ、そこに「学歴」が成立する微妙なプロセスを再現した好著と云える。
 さて、たまたま前回「人材、百年」と題して、今ここに兆す、基礎的な学力と学ぶことへの意欲について危機への思いを述べさせていただいた。
 よっしゃ、久々に師の門を叩き、今日の教育事情について率直にどう感じどう考えていらっしゃるのか尋ねてみたいと思っている。
 吉田兼好も「先達はあらまほしき事なり」といっている。

三村 申吾

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